夫が先に死んだら私の住む場所はどうなるんだろう?
相続すればいいと思うけど、相続税がかかるかもね・・・
亡くなった人の財産を引き継いで相続税を支払うことになると、その税額はとても大きくなるのではないかと心配な人が多いでしょう。
相続した財産の金額により相続税額は変わると理解していても、実際に計算してみなければ、その金額の見当もつかないので、より不安になってしまいます。
ただ、相続税には配偶者控除という制度があるので、一定の条件にあてはまればまったく相続税の心配はなくなります。
配偶者控除とはどのような制度で、どういった場合に相続税の心配はなくなるのか、解説します。
相続税の配偶者控除とは
相続税の配偶者控除とは、配偶者が支払うこととなる相続税の負担を軽減する制度です。
配偶者が相続した財産に対する相続税について、本来であれば発生する税額を、一定金額あるいは一定割合までの相続分について税額が発生しないようにします。
ただ、その上限を超えて相続した財産については、配偶者控除の対象ではありません。
配偶者であれば必ず相続税がゼロになるわけではなく、配偶者でも相続税を支払わなければならないケースはあるので、注意が必要です。
配偶者控除が適用される条件
配偶者控除が適用されるのは、被相続人の財産を配偶者が相続した場合です。
被相続人の配偶者とは、亡くなった人の夫または妻ということになりますが、いくつか注意しなければならない点があります。
配偶者にあたらない人
配偶者控除の適用を受けられる配偶者とは、法律上の婚姻関係にある人を指します。
そのため、実質的には配偶者といえるような場合でも、内縁関係や事実婚状態にある人は相続税の配偶者控除の適用は受けられません。
配偶者の婚姻期間は関係なし
相続税の配偶者控除の適用を受けられるのは、相続が発生した時点で法律上の配偶者となっている人です。
相続発生時点での婚姻期間による制限はなく、たとえ亡くなる前日に婚姻した人であっても、相続税の配偶者控除の適用を受けられます。
この点は、婚姻期間による制約がある贈与税の配偶者控除と考え方が異なるので、注意しましょう。
配偶者控除により控除される金額
相続税の配偶者控除が適用されると、配偶者が相続した財産の一部または全部が控除されます。
相続税の対象となる財産の金額が減少することで、相続税の負担が軽減されることとなります。
相続税の配偶者控除が適用されると、下記のいずれかの金額が配偶者の相続財産の金額から控除されます。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分
配偶者の法定相続分は、子供がいる場合は相続財産の2分の1、子供以外に法定相続人がいる場合は3分の2または4分の3、ほかに法定相続人がいない場合はすべてとなります。
しかし、実際に相続する財産の額は法定相続分に限られるわけではなく、法定相続分を超えることも珍しくありません。
そのため、配偶者の相続分が1億6,000万円を超えた場合は、配偶者控除で控除されない金額が発生する可能性が出てきます。
また、配偶者控除で控除されるのはあくまで配偶者の相続分だけです。
配偶者以外の相続人の相続財産から控除されることはありませんし、配偶者控除の金額が上限に達しない場合でも、余った金額をほかの相続人に振り分けることはできません。
配偶者控除により配偶者の相続税がゼロになる場合
相続税の配偶者控除の控除額は、1億6,000万円が上限になるわけではなく、それ以上の控除を受けられることもあります。
一方で、法定相続分を超えて相続した配偶者であっても、配偶者控除により相続税が発生しないこともあります。
そこで、相続財産の金額と法定相続人の組み合わせにより、配偶者控除の金額がいくらになるか解説していきます。
法定相続人が配偶者と子供の場合
法定相続分は配偶者が2分の1、子供が2分の1となります。
この場合、相続財産の総額と配偶者の相続分から、配偶者控除は以下のように適用されます。
| 相続財産の総額 | 配偶者の相続税をゼロにするには | 配偶者控除の適用額の上限 |
|---|---|---|
| 〜1億6,000万円 | 配偶者の相続分はいくらでもいい | 1億6,000万円 |
| 1億6,000万円〜3億2,000万円 | 配偶者の相続分は1億6,000万円以下にする | 1億6,000万円 |
| 3億2,000万円〜 | 配偶者の相続分は法定相続分にする | 法定相続分 |
相続財産の総額が1億6,000万円以下の場合
相続財産をすべて配偶者が相続しても、配偶者控除により課税対象となる金額はゼロになります。
そのため、配偶者がどれだけの財産を相続するかに関係なく、配偶者の相続税はゼロとなります。
相続財産の総額が1億6,000万円を超え3億2,000万円以下の場合
相続財産をすべて配偶者が相続すると、1億6,000万円または法定相続分のいずれも上回ることとなるので、配偶者控除では控除しきれません。
一方、配偶者の相続分を1億6,000万円以下にすれば、配偶者の相続分は法定相続分を上回りますが、配偶者の相続分の全額を控除でき、配偶者の相続税はゼロとなります。
相続財産の総額が3億2,000万円を超える場合
相続財産をすべて配偶者が相続すると、1億6,000万円または法定相続分のいずれも上回ることとなるので、配偶者控除では控除しきれません。
一方、配偶者の相続分を法定相続分以下にすれば、配偶者の相続分は1億6,000万円を上回りますが、配偶者の相続分の全額を控除でき、配偶者の相続税はゼロとなります。
法定相続人が配偶者と直系尊属の場合
法定相続分は配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1となります。
この場合、相続財産の総額と配偶者の相続分から、配偶者控除は以下のように適用されます。
| 相続財産の総額 | 配偶者の相続税をゼロにするには | 配偶者控除の適用額の上限 |
|---|---|---|
| 〜1億6,000万円 | 配偶者の相続分はいくらでもいい | 1億6,000万円 |
| 1億6,000万円〜2億4,000万円 | 配偶者の相続分は1億6,000万円以下にする | 1億6,000万円 |
| 2億4,000万円〜 | 配偶者の相続分は法定相続分にする | 法定相続分 |
相続財産の総額が1億6,000万円以下の場合
相続財産をすべて配偶者が相続しても、配偶者控除により課税対象となる金額はゼロになります。
そのため、配偶者がどれだけの財産を相続するかに関係なく、配偶者の相続税はゼロとなります。
相続財産の総額が1億6,000万円を超え2億4,000万円以下の場合
相続財産をすべて配偶者が相続すると、1億6,000万円または法定相続分のいずれも上回ることとなるので、配偶者控除では控除しきれません。
一方、配偶者の相続分を1億6,000万円以下にすれば、配偶者の相続分は法定相続分を上回りますが、配偶者の相続分の全額を控除でき、配偶者の相続税はゼロとなります。
相続財産の総額が2億4,000万円を超える場合
相続財産をすべて配偶者が相続すると、1億6,000万円または法定相続分のいずれも上回ることとなるので、配偶者控除では控除しきれません。
一方、配偶者の相続分を法定相続分以下にすれば、配偶者の相続分は1億6,000万円を上回りますが、配偶者の相続分の全額を控除でき、配偶者の相続税はゼロとなります。
法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合
法定相続分は配偶者が4分の3、直系尊属が4分の1となります。
この場合、相続財産の総額と配偶者の相続分から、配偶者控除は以下のように適用されます。
| 相続財産の総額 | 配偶者の相続税をゼロにするには | 配偶者控除の適用額の上限 |
|---|---|---|
| 〜1億6,000万円 | 配偶者の相続分はいくらでもいい | 1億6,000万円 |
| 1億6,000万円〜2億1,332万円 | 配偶者の相続分は1億6,000万円以下にする | 1億6,000万円 |
| 2億1,332万円〜 | 配偶者の相続分は法定相続分にする | 法定相続分 |
相続財産の総額が1億6,000万円以下の場合
相続財産をすべて配偶者が相続しても、配偶者控除により課税対象となる金額はゼロになります。
そのため、配偶者がどれだけの財産を相続するかに関係なく、配偶者の相続税はゼロとなります。
相続財産の総額が1億6,000万円を超え2億1,332万円以下の場合
相続財産をすべて配偶者が相続すると、1億6,000万円または法定相続分のいずれも上回ることとなるので、配偶者控除では控除しきれません。
一方、配偶者の相続分を1億6,000万円以下にすれば、配偶者の相続分は法定相続分を上回りますが、配偶者の相続分の全額を控除でき、配偶者の相続税はゼロとなります。
相続財産の総額が2億1,332万円を超える場合
相続財産をすべて配偶者が相続すると、1億6,000万円または法定相続分のいずれも上回ることとなるので、配偶者控除では控除しきれません。
一方、配偶者の相続分を法定相続分以下にすれば、配偶者の相続分は1億6,000万円を上回りますが、配偶者の相続分の全額を控除でき、配偶者の相続税はゼロとなります。
法定相続人が配偶者だけの場合
法定相続人が配偶者だけだと、法定相続分を有するのは配偶者だけです。
この場合、配偶者が相続した財産の額と同額の配偶者控除が適用されるため、配偶者の相続税は常にゼロとなります。
| 相続財産の総額 | 配偶者の相続税をゼロにするには | 配偶者控除の適用額の上限 |
|---|---|---|
| いくらでも | いくらでも | 法定相続分(全額) |
配偶者控除を適用する場合の注意点
配偶者控除が適用されると、相続税の負担は大幅に軽減されます。
ただ、配偶者控除には注意すべきポイントもあるので、適用を受ける前によく考えておく必要があります。
配偶者以外の相続人には相続税がかかる
相続税の配偶者控除の制度は、配偶者が負担する相続税の税額を軽減するものです。
配偶者の税負担は大幅に軽減されますが、一方で配偶者以外の相続人に対する相続税は減額されません。
配偶者控除の適用だけを考えて遺産分割を行うと、ほかの相続人の税負担が大きくなりすぎたり、相続財産で税金が支払えないといったことになりかねないので注意しましょう。
なお、配偶者がほかの相続人の相続税を払ってあげると、贈与が成立してしまいます。
その結果、相続税とは別に贈与税が課されることもあるので、税金の支払いまで考えておくことが大事です。
二次相続の税額が増える
法定相続人が配偶者と子供の場合、配偶者の相続分をできるだけ増やし配偶者控除の金額を上限とすることで、相続税の負担を大きく減らすことができます。
ところが、法定相続人の中で次に亡くなる可能性が高いのは配偶者であり、配偶者の保有する財産は相続税の対象となります。
一次相続の段階でより大きな配偶者控除の適用を受けて、相続税の負担が軽減できても、二次相続ではより大きな相続税が発生することになります。
配偶者控除の金額だけを考えて遺産分割を行うと、二次相続まで含めて考えた場合に大きな損になることがあります。
相続財産の金額が大きく、相続税の税額が大きくなりそうな人は、必ずシミュレーションを行って遺産分割の方法を決めるようにしましょう。
まとめ
相続税の配偶者控除は、一見単純な制度のように思えますが、実際は金額の計算などで注意すべき点があります。
また、相続した配偶者が亡くなった時のことを考えると、配偶者控除の適用を最大限受けることが必ずしも有利ではないこともあります。
財産はいずれ子供が相続するものとして、どのタイミングで子供に相続させるのが有利なのかを考えるようにしましょう。


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